
西洋の古い書物には、カタツムリと騎士が戦う奇妙な挿絵が登場することがあります。今回は、大英図書館の有名な写本「Royal MS 14 B V」に描かれた1枚を、私なりに読み解いてみました。
大英図書館のブログ「騎士 対 カタツムリ」

先日、大英図書館のブログを紹介するSNSの投稿が目に入りました。
2013年9月25日、大英図書館が「Knight v Snail(騎士 対 カタツムリ)」というブログを公開しています。13世紀末のイングランドの巻物「Royal MS 14 B V」を調査中、余白にカタツムリと戦う騎士の絵が見つかったという内容です。
そして、私は一枚の絵がとても気になりました🤔

実はこのカタツムリが登場するモチーフは、他の写本にもたくさん登場する中世の定番の余白装飾なんだそうです。
そこに何が書かれているのか気になって、月曜日から古いフランス語の文章を調べ始めました。文献を探し、写本の画像を拡大し、AIにも手伝ってもらいながら、少しずつ文章を追っていきます。
そして金曜日まで5日間かけて調べてみると、意外なことが見えてきました。
ただし、謎がすべて解けたわけではありません。むしろ、分かったことが増えるほど、新しい疑問も増えてきました。
Royal MS 14 B Vとは

By Unknown author – http://www.bl.uk/manuscripts/FullDisplay.aspx?ref=Royal_MS_14_B_V, Public Domain, Link
大英図書館(British Library)が所蔵する、13世紀末(1275年〜1300年頃)に作成された中世のイングランド国王系図クロニクル(Genealogical Chronicle of the English Kings)の写本(ロール状の巻物写本)です。言語は、当時のイングランドで使われていた古いフランス語です。
有名な図柄なので、様々な方が作品を観て「なぜカタツムリ?謎だ…」で終わる解説が多いようなのです。よく見ると現代フランス語とそっくりな単語が並んでいます。
そこで、特に気になった2か所について、現代フランス語を手がかりに、意味を読み取ってみることに挑戦してみました。(現代語への類推はMeta AIにも協力してもらいました)
作品中の古フランス語と現代フランス語の比較
2行目から3行目に出現する単語
lermes → larmes(涙)
si lungement → si longuement(長く)
Ihesu crist → Jésus-Christ(イエス・キリスト)
fountaine de misericorde → fontaine de miséricorde(慈悲の泉)
最後の行に出現するフレーズ
Cestui Edgar fu home paisible → Celui-ci, Edgar, fut un homme paisible(このエドガーは平和を愛する者であった)
抄訳「Royal MS 14 B V」
2行目から3行目あたり
罪の不幸で涙にくれ、慈悲の泉であるイエス・キリストに長く祈り続けた。そして彼が治めている間、聖なる教会は虐げられ破壊された。最後の行
Royal MS 14 B V, membrane 3
このエドガーは平和を愛する者であった。
悪政から善政への転換点を描いているようにも見える
ここまで読んでくると、ひとつの見方として、こんな仮説が浮かんできます。
文章には、涙、イエス・キリスト、慈悲、教会などの言葉が登場します。その後に、「Cestui Edgar fu home paisible(このエドガーは平和な人物だった)」という文章が続きます。
すると、「教会が苦しんでいた時代から、エドガーの平和な時代へ」という対比が、このページの中にあるようにも見えてきます。
エドガー王は、後世の歴史の中でも、教会改革などとの関係で重要な王として語られることがあるようです。
もしかすると、この文章には、単なる王の系譜だけではなく、当時の王の評価や宗教との関係についての記述も含まれているのかもしれません。あくまで私の読み方ですが。
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Not known – Scanned from the book The National Portrait Gallery History of the Kings and Queens of England by David Williamson, ISBN 1855142287., パブリック・ドメイン, リンクによる
966年のウィンチェスターのニュー・ミンスター勅書(英語版)の冒頭飾絵。これはアングロ=サクソン期のイングランドから現存する唯一の彩飾勅書であり、全文が金文字で書かれた唯一の写本でもある。絵には、エドガー王が聖母マリアと聖ペテロに挟まれて立ち、玉座に座るキリストへ勅書を捧げる姿が描かれており、キリストの周囲には四人の翼を持つ天使が配されている
Wikipediaより
カタツムリは何を意味するのか?
ここからは、さらに私の想像が入ります。

私には、カタツムリの前にいる人物が、何か丸いものを掲げているようにも見えます。
そして、その右側には、王を表す金色の円形肖像があります。
もしかすると、この二つの「丸いもの」には何か関係があるのでしょうか?
もしそうだとしたら、カタツムリと騎士の場面も、単なる「騎士 対 カタツムリ」のユーモアではなく、王や権力についての何らかの表現なのかもしれません。
……とはいえ、これは今のところ、私の想像にすぎません。
皆さんはこの挿絵を見て、どんな物語を思い浮かべますか?ぜひ感想をコメントで教えてください!

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