
今年の冬、我が家では例年になく多くのカタツムリの赤ちゃんが生まれました。毎年育てているウスカワマイマイに加え、ヒダリマキマイマイ、ミスジマイマイ、オナジマイマイ、コハクガイ、ナミギセル、ナミコギセル、そして未同定のキセルガイ類など、実に多様な陸貝が秋の終わりに次々と孵化しました。今回は、いろいろな種類のカタツムリの稚貝を育てる上で、今年の冬に気を付けている事をご紹介します。

これまで問題のなかった冬の飼育方法
これまで、冬場の飼育で大きな問題を感じたことはありませんでした。
我が家では、毎年ウスカワマイマイの赤ちゃんを育てていますが、ウスカワマイマイはもともと乾燥に強い種であり、カップにネットをかけた簡易的な保育器でも、冬の乾いた室内環境で無事に育ってくれていました。
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その経験から、私は「カタツムリの赤ちゃんは、この方法で大丈夫」という一つの基準を、無意識のうちに作ってしまっていたのだと思います。
しかし、今年は様子が違いました。
特にミスジマイマイの赤ちゃんは、同じ環境で飼育しているにもかかわらず、体調を崩す個体が多く見られました。乾燥が進むと動きが鈍くなり、やがて回復しないまま死んでしまうこともありました。
霧吹きの回数を増やしたり、観察の頻度を上げたりしても、決定的な改善には至りませんでした。「同じカタツムリの赤ちゃんでも、何かが違う、でもどうしたら良いのか分からない」としばらく紋々とした日々を過ごしていました。

スーパーで見かけたランチボックス

転機は、意外にも日常の買い物の中で訪れました。
スーパーで見かけた密閉式のランチボックスに、新鮮な野菜が入った写真付きのラベルが貼られていたのです。あと、汁もこぼれにくいようなイメージ写真が使われていました。
私は、このランチボックスは、「数日なら野菜が乾燥しないで新鮮なまま保たれるのかな?」と考えたのです。
そして、「もしかしたら、赤ちゃんカタツムリの乾燥対策になるのではないか」と思いました。ちなみに特別な飼育用品ではなく、数百円で購入できる身近なキッチン用品だったからこそ、試してみようという気持ちになったのかもしれません。
密閉容器での飼育とその結果

ランチボックスを保育器として使用し、ヒダリマキマイマイ、ミスジマイマイ、オナジマイマイ、コハクガイの赤ちゃんを飼育してみました。
すると、これまで体調を崩していた個体も含め、安定して成長するようになりました。
ただし、密閉したままにすることはしていません。1日に2回は必ずフタを開けて空気を入れ替え、霧吹きで適度な湿度を保つようにしています。密閉容器は、飼育を簡単にするための道具ではなく、湿度を安定させるための補助的な環境だと感じています。

乾燥に強い種と、湿度を必要とする種
一方で、ナミギセルやナミコギセルなどのキセルガイ類は、これまで通りカップにネットをかけた飼育方法で問題なく育っています。むしろ過剰な湿度は必要なく、通気性の良さが重要に思えました。
同じ「カタツムリの赤ちゃん」であっても、乾燥に強い種と、湿度を必要とする種がはっきりと分かれたのです。

今回の飼育から得た気づき
今回の経験を通して、私は改めて気づかされました。
「カタツムリ」という言葉で一括りにしてしまうことの危うさです。種ごとの生態の違い、季節による環境変化、気温や湿度。それらを組み合わせて考えなければ、本当に適した飼育環境にはなりません。
カタツムリを育てているつもりで、実は私は、環境との関係性を観察し、調整しているのだと感じました😌
冬を越える、小さな命たち

ランチボックスの中で冬を越す、極小の命たち。
確かに手間は増えましたが、その分、彼らの違いが以前よりもはっきりと見えるようになりました。
今年の冬は、カタツムリの赤ちゃんたちから、「同じに見えるものほど、注意深く観察することが大切だ」という静かなメッセージを受け取った季節だったのかもしれません。



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