ベッコウマイマイの同定は難しい? 秋川渓谷で出会った一匹のカタツムリ

生態
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2025年、貝類学会 若手の会で、秋川渓谷周辺に生息する陸貝について発表する機会がありました。その発表スライドの中に、一匹だけ「ベッコウマイマイの一種(同定中)」と記載したカタツムリがいました。今回は、その個体の同定についてご紹介します。

秋川渓谷周辺に生息する陸貝

筆者作成資料:秋川渓谷に生息する陸貝

左下に写っているのが、「ベッコウマイマイの一種(同定中)」とした個体です。

私は同じと思われる個体を何度か観察しており、

「未同定ですが、おそらくウラジロベッコウ(Urazirochlamys doenitzii)ではないかと思います。」

と発表しました。

ところが発表後、若手研究者の方々に相談すると、返ってきた言葉は意外なものでした。

「この手のやつは難しいんですよ。」

他の若手の研究者の方からも同様のお話を伺い、「専門家でも簡単には判断できないグループなのだ」と改めて実感しました。

その時、「もっと情報を集めなければ、正確な同定はできない」と感じたことを今でも覚えています。

日本貝類学会若手の会は、軟体動物に関心がある学生や若手研究者、愛好家の交流を目的にした会です。「若手」の会ですが、年齢制限等は特に設けておりません

一部、若手の会のホームページより引用

ベッコウマイマイは同定が難しい

実は、ウラジロベッコウの分類には長い歴史があります。

1877年、ドイツのラインハルトによって Hyalina doenitzi として記載されました。

その後、1900年には Gude が Crystallus sulcatus という別種として記載しましたが、現在ではこれもウラジロベッコウと考えられています。

さらに1946年、波部忠重博士の「日本産ベッコウマイマイ科の再検討」によって、当時不足していた解剖学的知見が整理され、殻の形だけではなく歯舌(しぜつ)の微細構造も考慮した新しい分類体系が提案されました。

その結果、本種は現在の Urazirochlamys doenitzii に整理されています。

このような分類の歴史を見るだけでも、ベッコウマイマイの同定がいかに難しいかが伺えます。

今年の2026年7月に秋川渓谷にて観察した個体:ウラジロベッコウ

ベッコウマイマイとウラジロベッコウ

ベッコウマイマイは、コウラナメクジ上科・ベッコウマイマイ科に属する小型の陸貝です。

べっ甲細工のような飴色で透明感のある殻を持ち、体の後端には小さな突起(尾端突起)があることも特徴です。

ウラジロベッコウはその一種で、本州・四国・九州に分布します。

殻高約3.5mm、殻径約7mmほどの小さな種類で、殻の裏面中央が白っぽく見えることが、「ウラジロ(裏白)」という和名の由来になっています。

艶やかな殻が特徴です✨
殻をひっくり返すと、臍孔周辺がやや白いです。(標本化するともっと白くなります)

ベッコウマイマイ類は、殻だけで判断することが難しい種類です。

そのため私は、次のような特徴が分かる写真を必ず撮影するようにしています。

  • 艶のある半透明の殻
  • 尾端突起
  • 殻の裏側(臍孔や底面)

複数方向から撮影しておくことで、後から専門家へ相談しやすくなります。

そして、最も重要なのが「どこで採取したのか」です。

カタツムリは、地域性が強い生き物なので、私のように「秋川渓谷で採取しました」と相談相手に伝える事で、同定への足がかりとなります。

SNSやiNaturalistを活用する

カタツムリは資料が少なく、周囲に詳しい人がいるとは限りません。

そんな時に役立つのが、SNSやiNaturalistです。

私は今回の個体についても、XとiNaturalistへ写真や動画を投稿し、多くの方からご意見をいただきました。

インターネットでは、生き物に興味を持つ人へ情報が届きやすく、専門知識を持つ方から助言をいただけることがあります。

一人で悩むより、多くの目で見てもらうことが、同定への近道になるのかもしれません😊

【SNSでの同定依頼】Xの活用

iNaturalistの活用

Just a moment…

インターネットを活用する場合は、iNaturalistがお勧めです。投稿データとして、撮影年月日、撮影した場所など、様々なデータが画像と一緒に登録可能です。

さらに、データ品質の評価がされるので、正確な同定にかなり近づきます😊

生き物との出会いは野外から始まる

カタツムリは夜行性です。夜の観察の場合はライトを形態しましょう🔦

皆さんは最近、カタツムリを見かけたでしょうか。

先日、NHK Eテレ「ヴィランの言い分」では、「最近はカタツムリを見かけなくなった」という話題が取り上げられていました。

確かに、図鑑やインターネットには多くの情報があります。

しかし、野外で一匹のカタツムリと出会い、その姿や動きをじっくり観察した時に得られる情報量は、それらを上回るものがあります。

カタツムリは、童謡にも歌われるほど、日本人にとって身近な生き物でした。

けれども今では、「歌は知っているけれど、本物は見たことがない」という子どもが増えているのかもしれません。

そう考えると、ベッコウマイマイのような小さな生き物を知る機会も、少しずつ失われているのでしょう。

だからこそ、自然の中で生き物と出会える環境を大切にしていきたいものです。

一匹のカタツムリとの出会いが、新しい発見や学びにつながる。

そんな自然が、これからも身近にあり続けてほしいと願っています。😌

ぷかまる 第十八話「秋川渓谷で浮いたカタツムリ」

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