
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理(ことわり)をあらはす。」これは、日本のゲンジボタル、ヘイケボタルの和名の由来となった、源氏と平家の争いを記した「平家物語」の冒頭の一節です😌人の世の栄枯盛衰を語りながら、同時に“変わり続ける世界の宿命”を描いたものです。しかし、この響きは人間の歴史だけにとどまりません。今回は、ホタルとカタツムリの奇妙で美しい進化の戦いをご紹介します😊
意外なホタルとカタツムリの進化

例えば、子供に「ホタルは、どんなところにいるの」👦?
と聞かれたら、ほとんどの大人は、
「キレイな水辺にいるよ」👨
答える人が多いと思います。
それは、実際に日本に生息する多くのホタルは、水辺に住み、その幼虫は川に住むカワニナなどを食べて暮らしているからです。
しかし、実は、世界各地に生息するホタルの幼虫は、一般的には、陸に住み主にカタツムリを食べて暮らしています🎓
【参考資料】琉球大学 農学部 トリビア
ホタルとカタツムリは、一見すると静かでひっそりとした存在ですが、その進化の道筋はとてもドラマティックなのです。
- 多くが陸に暮らすホタルの中で、“水中へ戻る”という珍しい進化を遂げたゲンジボタルとヘイケボタル。
- 海から陸へと進出し、殻を背負いながら地上での生に適応した陸貝カタツムリ。
- そして、海から川へ逆流するように進化した淡水の巻貝カワニナ。
それぞれが違う方向へ進化しながらも、彼らは“食う・食われる”関係のなかで響き合い、時を超えた一つの物語を形づくっています。
水生ホタルは世界的に珍しい

私たちが「ホタル」と聞いてまず思い浮かべるのは、川辺に舞うゲンジボタルではないでしょうか🤔
しかし世界的に見ると、こうした“水生のホタル”はむしろレアな存在なのです。大多数のホタルの幼虫は陸に棲み、陸生のカタツムリを主な獲物として進化してきました。
ホタルとは本来、陸の肉食者なのです。なお、世界に2000種類以上いるとされるホタル科の種のうち幼虫期を水中で過ごす水生ホタルは10種類ほどで、日本にはゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタルの3種が生息しています。
【参考資料】クメジマボタル Wikipediaより
陸から水へ逆戻りした日本のホタル

日本のゲンジボタルとヘイケボタルは、世界でも特異な“水生ホタル”という進化を遂げました。彼らの幼虫は陸を離れ、淡水生態系に適応し、カワニナやモノアラガイなどの淡水性巻貝を主な獲物としています。
ゲンジボタルの幼虫は、川辺のカワニナを食べて生活をしています。しかし、ゲンジボタルの幼虫は、「川辺のどこにでもいる」というわけではありません。幼虫は、川辺の自分の身が隠せるような、浮き石がある川底のとてもニッチな環境に生息しています。

一方で、カワニナは川辺全域に生息しているため、ゲンジボタルの幼虫によってカワニナが食べ尽くされる事はあまり無いようです。
なお、ゲンジボタルの幼虫は酸素を取り入れるために、腹部各節の発達させた8対の鰓によって効率的に水中の酸素を供給しています。
本来、陸で生活していたホタルの幼虫が、これほどの進化を遂げるというのは、とても驚きです😃
【参考資料】ホタル百科事典・東京にそだつホタル
なぜ水辺で日本の主なホタルの生活するようになったのか?
本来、ゲンジボタルとヘイケボタルの祖先は陸生だったと考えられています。これは確定ではありませんが、次の点から推測されます。
- ほとんどのホタルが陸生である
- 水生化には呼吸様式や浸透圧調整など、大きな形質変化が必要
- 本来、陸生のホタルの幼虫の獲物は陸貝である
- 日本のホタルのほとんど淡水域で獲物となる巻貝の分布と一致する
つまり、水生環境に豊富な餌(淡水性巻貝)が存在したことが、彼らを水へ引き寄せたのかもしれません🤔
そして、ホタルとカタツムリの戦いは沖縄へ⚔️

先日、NHKは沖縄に住むカタツムリの減少を報じています。

ヤエヤママドボタルは、八重山諸島の固有種ですが、2003年に、沖縄本島南部への侵入が確認された「国内外来種」です。
そして、今では沖縄本島のカタツムリ達の生息を脅かす存在となっています。
沖縄本島のカタツムリ達はとても脆弱な存在で、その多くがヤエヤママドボタルによって食べられているのです😭
カタツムリは、その土地の植物を食べ、土壌を豊かにする働きがあります。そのため、カタツムリの減少は、そこの生態系に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

一方で、八重山諸島に住む、カタツムリ達はヤエヤママドボタルに対抗するため、殻の侵入を防ぐために、殻の中から泡を吹くように進化しているとNHKは報じてます🐌
このように、現在でも「ホタルとカタツムリの進化が響き合う、奇妙で美しい“生き物たちの平家物語“」は、続いているのです🧐

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