今回は、本ブログをお読み頂いた方から寄せられた、2023年12月13日のご相談ついて、お応え致します😄
Dさんからのご相談
いつも楽しくブログを読んでいます。
ブログを読んでいて気になることがあるので、教えて頂けないでしょうか?
図鑑に、湿度の高い密閉された空間にカタツムリを入れると、カタツムリが弱ってしまうと書いてありました。
多くの書籍やカタツムリのブログなどでも書いてあることですし、適度な乾燥や空気の流れがあった方が元気に育つことは、カタツムリを飼育しているのでよく知ってはいます。ですが、その理由が良く分かりません。雑菌説、体の水分が多くなり過ぎる説など色々考えられますが、どうも決め手に欠けているように感じます。
難しい質問をして申し訳ないですが、
ウスカワマイマイは何故乾燥に強いと思いますか?
また、蒸れると弱る理由は何だと思いますか?あまりにも難しい質問だと思うので、明確な答えでなくでも大丈夫です。考えと、根拠を教えて頂けると幸いです。
こつむ日記 2023年12月13アンケートより
アンケートのお礼
Dさん、いつも「こつむ日記」をお読みいただきありがとうございます😊
図鑑を読みながら、熱心にカタツムリの飼育をしていらっしゃるようですね☺️
また、適度な乾燥や、換気にも気を配っていて、カタツムリもさぞかし元気に育っている事と思います。
さて、今回はとても専門的なご質問をいただきましたが、自分が、調べた範囲でご質問にお応えいたします😆
野生生物保全センターオンライン講演会について
東京都日野市の「多摩動物公園」では、小笠原諸島が世界自然遺産登録10周年を迎えたことを記念し、都立動物園・水族園が取り組む小笠原のさまざまな希少生物の保全に関するオンライン講演会「未来につなごう! 世界に誇れる小笠原の生き物たち」を2022年2月6日に開催しました。オンライン講演会では、一般財団法人自然環境研究センターの森英章氏が、「カタツムリの楽園復活のためのABC」と題して、小笠原のカタツムリの保全活動についてご紹介しています。
小笠原のカタツムリの保全活動の例
小笠原は海洋島という舞台で100種を超える多様な進化を遂げたカタツムリたちの楽園と言われています。
しかし現在では、様々な環境の変化により、小笠原のカタツムリ達は、絶滅のピンチに瀕しています。そしてこれまで10年以上をかけて、小笠原では地域・行政・研究者のチームワークで「楽園復活」のために様々なカタツムリの保全活動が行われています。
その活動の中で、小笠原では、屋内で育てたカタツムリを野外でも、飼育する取り組みが行われています。そして、カタツムリの保全活動には、いくつか課題もあると述べています。
その課題の一つとして、自然環境センターの森氏は、「カタツムリへの過保護」により、常に加湿した状態にした場合に、カタツムリの殻が外れてしまう現象、「殻はずれ」が起きたと説明しています。
そして「殻はずれ」になってしまったカタツムリは、殻と内臓の捻れが生じてしまい、絶命してしまったそうです😑
そのため、森氏は「殻はずれ」を防ぐために、カタツムリを殻に閉じ込めさせるために、「適度な乾燥」により、回避出来ると述べています。なお「過度の加湿と、殻外れの関係性」は、講演では解説されていません。そこで、カタツムリの殻が外れるという事は、どのような事なのか調べました。
殻軸筋について
カタツムリとナメクジは、同じ陸に生息する「巻貝」の一種です。ナメクジは、カタツムリのような殻が無い事は、ご存知かと思います。
実は殻の他にも、「カタツムリにあって、ナメクジには無い部分」があります。
それは、カタツムリの殻を持ち上げている「殻軸筋」と呼ばれる部位です。
「殻軸筋」はカタツムリの腹足と内臓の間に位置し、巻貝の殻と軟体部を殻にくっ付けている、とても重要な部位です。
巻貝の肉抜きについて
岡山大学大学院環境生命科学研究科の福田宏准教授は、2021年11月26放送の「タモリ倶楽部」に出演し、サザエの肉抜きについて解説し「殻軸筋(赤丸部分)が外れると、軟体部がすっぽり外れてしまう」と述べています。
つまり、殻がある巻き貝にとって殻軸筋は、軟体部と殻を繋ぐ、言わば生命線とも言える重要な部位なのです。
この「殻軸筋」と「カタツムリが蒸れると弱る」事は関係がある、と私は考えています。
カタツムリの殻軸筋と過度な加湿の関係
環境センターの森氏や、岡山大学の福田氏の解説を参考にすると「カタツムリの殻軸筋」は過度な加湿の影響を受けやすい部位なのでは?と私は考えています。
なぜなら過度な加湿により、小笠原のカタツムリの軟体部が殻から外れたのであれば、それを繋げていた「殻軸筋が外れた」と考えられるからです🧐
Dさんは、「湿度の高さ」がカタツムリを弱らせるとお調べになったようですが、カタツムリを弱らせる理由は、「殻軸筋」に悪影響を及ぼすからなのかもしれません🤨
しかし、自分が調べた範囲では、陸貝の殻軸筋と加湿の関係を具体的に示す資料は見あたりませんでした😅
なので、自分の殻軸筋への影響の話は、あくまでも本ブログの仮説として参考になさってください😌
ちなみに、我が家のウスカワマイマイのこつむは、殻の中に水が入るのを嫌がるようで、霧吹きで水をあげると、殻をブルンブルン回しています。自分は、これについては、殻の中に入ってきた水分を体外に排出しているのかもしれないと考え、またカタツムリ自身の殻軸筋への負担は大きいと推測しています。
そのため、自分はカタツムリに水分を与える時は、なるべく水がかからないようにしています。また、飼育ケースは換気の良いところに置き、適度な乾燥を保っています。
ウスカワマイマイはなぜ乾燥に強いのか🤔
Dさんがお察しの通りウスカワマイマイはとても乾燥に強いですよね。我が家では、年末に台所の大掃除をしていたら、隅っこに、乾燥したウスカワマイマイがいて、慌てて水をかけたら復活した事がありました😅
カタツムリは、エピフラムという膜を殻の入口に張り、乾燥から身を守っています。これは、全てのカタツムリに見られる特徴なので、ウスカワマイマイに限った他の特徴がないかいろいろ調べてみました。
自然しらべ2004〜カタツムリを探そう〜
日本自然保護協会は、「自然しらべ」をテーマに、今の日本の自然を調べています。そして調べた結果は、環境基本計画で目指している「生物の多様性」の保全に役立つデータとして環境政策に提言しています。
日本自然保護協会が調べる対象は毎年は異なり、2023年は「カメ🐢」で、2019年は「アリ🐜」、また2015年には「砂浜」など生物以外の自然環境も調べています。そして、2004年には、「カタツムリの分布🐌」について調査を行いました。
全国に分布するカタツムリの特徴
自然しらべ2004では、日本各地に分布するカタツムリの種類を調査しています。その中で、一番日本に分布していたのが、「ウスカワマイマイ」と「オナジマイマイ」でした。
両方とも生息域の分布は、森林には住まずに、人と暮らす都市部に生息しています。また、ウスカワマイマイ、オナジマイマイは比較的、乾燥に強いという特徴があります。この乾燥に強くなったのは、彼らが暮らしている生態系の草原性が大きく影響していると思われます。
草原生態系について
草原性は、草に覆われ、木がまったくないか、ほとんど存在しない大地を指します。さらに草本や同程度の樹木がそれに混じった植生で、高い樹木がほとんどない場所です。
シダ植物と種子植物のうち,地上茎の生存が1年以上続かないもの。 一年草,二年草,多年草がある。 木本(もくほん)の対語。
草本とは/コトバンクより引用
背丈については必ずしも一定の基準があるわけではなく、芝生のようなものから、ススキ草原のように2メートルを越えるものもこれに含まれ、環境的に乾燥して、森林と比べて降水量が少ないという特徴があります。
そして、この草原性の広大な土地は、植物や動物にとって特有の生態系を形成しています。これを草原生態系といいます。
おそらく、ウスカワマイマイは、比較的、降水量が少ない草原生態系の植物を食べて暮らしている内に、だんだんと乾燥に強くなっていったのだと自分は考えています😌
【参考資料】国立環境研究所 コラム
まとめ
今回は、ご質問にお応えして「なぜカタツムリは蒸れると弱るのか」と「なぜウスカワマイマイが乾燥に強いのか」について考察しました。なおカタツムリの生態は、中々まとまった資料がないので、いろいろな専門家の知見を参考にさせていただきました。
カタツムリの飼育はもちろん楽しいですが、様々な分野の軟体動物の専門家の資料などを拝見するのも、とても興味深い事です。
なお、今回の内容は、あくまでも私的な考察を含んだ内容になっておりますので、その点はご承知おきくださいね😊
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