
先日、我が家のニッポンマイマイが産卵をしました。
ニッポンマイマイの卵は、細い軟体部からは想像できないほど、比較的大きな卵を産み落とします。ちなみにニッポンマイマイには、カタツムリの繁殖でよく知られる「恋矢(ラブダート)」を持たないという特徴があります。
今回は、そんなニッポンマイマイの繁殖活動についてご紹介します。
カタツムリの保健体育 ― 生殖器のしくみ ―

カタツムリは雌雄同体で、一つの体の中にオスとメス、両方の生殖機能を持っています。
その構造は、ざっくりとしたイメージでは「Y字型」をしています。
分かれた二つの方向のうち、一方がオス側、もう一方がメス側の器官につながっています。

いわゆる「恋矢(ラブダート)」は、このうちメス側の生殖器の近くに位置する構造です。
恋矢は「矢嚢(しのう)」と呼ばれる袋の中に収められており、その近くには粘液を分泌する「粘液腺」があります。
ただし、この恋矢はすべてのカタツムリに備わっているわけではありません。
ニッポンマイマイは、この矢嚢と粘液腺を持たない、いわば“ラブダートを使わない”カタツムリなのです。
ラブダートは必ずしも交尾に必要ではない
では、ラブダートを持たないニッポンマイマイは、どのように交尾を行うのでしょうか。
そんな疑問が浮かぶ方も多いかもしれません。
そもそもカタツムリの交尾は、生殖器を相手に挿入し、精子を受け渡すというシンプルな仕組みです。
ここでひとつ、誤解されやすい点があります。
カタツムリの「恋矢(ラブダート)」は、生殖器そのものではありません。ラブダートはあくまで、生殖活動を補助するための器官であり、交尾そのものに直接使われるわけではないのです。
相手の体内に何らかの影響を与え、繁殖を有利に進める役割があると考えられていますが、その詳細な仕組みについては、まだ完全には解明されていません。

同定の手がかりとなる器官「鞭状器」
カタツムリの生殖器には、「鞭状器」と呼ばれる、オス側の生殖器の先端にある構造があります。

カタツムリの生殖器のイメージ図2(雑)/作成:百尺
ここは、精子を「精莢(せいきょう)」と呼ばれるカプセル状のかたちで保存しておく場所です。
なお、ニッポンマイマイの仲間を見分ける(同定する)際には、この「鞭状器」の形や特徴が重要なポイントになります。
ニッポンマイマイの恋愛術
カタツムリのラブダートについては、さまざまな研究が行われています。
その役割の一つとして、「相手が他の個体と再び交尾するのを抑える」という説があります。
いわば、浮気防止のような機能です。
実際に、ラブダートを受けた個体は、生殖に影響が出たり、寿命に負担がかかる場合があるとも言われています。
一方で、ニッポンマイマイはこのラブダートを持っていません。
そのためか、飼育していると、ニッポンマイマイは比較的頻繁に交接し、次々と卵を産んでいく様子が観察されます。
こうして見てみると、ニッポンマイマイの繁殖は、どこか“干渉の少ない関係”の上に成り立っているようにも感じられます。
その意味では、ニッポンマイマイの恋愛は、少し平和な関係性だと言えるのかもしれません。
【参考資料】教養番組「知の回廊」37「巻貝の生殖異変と環境問題」「巻貝の生殖とホルモン ~生殖異変の環境問題~」

ぷかまる 第五話「ぷかまるの浮気」


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