
先日、文学フリマに遊びに行きました😊本屋に行くと、自分の好きなジャンルを中心に回るのですが、その日は流れに身を任せて、ふらりと歩いていました。すると、とあるブースで「海綿動物」をテーマにした本が並んでいるのが目に入りました。今回は、文学フリマ東京で出会った偶然の奇跡をご紹介します✨
海綿動物研究者のブースで伺った熱い話

文学フリマには、試し読みコーナーがあります。文学フリマに出店されている方々の作品は、どれもきちんと製本された個性豊かな本がとても多いです。
私は、「どれも、レベルが高い書籍ばかりだな」と感心していました。
そして、その試し読みコーナーでは、何やら異彩を放っていた本がありました。それは「カイメン すてきなスカスカ」という本でした。本当は、カタツムリに関する作品を探していたのですが、「カイメン」という軟体動物と近しい生き物の本に興味を持ち、その方のブースに向かいました。

ブースに付くと、明るい感じの女性が、元気よく自己紹介してくださり、熱意とカイメン愛がこもったお話をしてくれました。その話を聞いているうちに私は、だんだんと引き込まれてしまいました…。
意外だったのは、その方がもともと「貝類」から研究の道に入ったということです。
私自身、カタツムリや軟体動物に興味があるので、その流れにも親近感を覚えました。
しかも、カタツムリのデザインを使ったノートまで販売されていて、思わず購入しました。
さらに、海綿動物を紹介した書籍も手に取り、そのままお財布に手がのびました。
カイメンという、これまで“知らなかった世界に出会えた”というワクワク感に背中を押されての衝動買いでした。

キリスト教から人の生活に根差した文化:両者が持つ「歴史の重なり」
「カイメン すてきなスカスカ」を読んで、私が最も共感したのは、カイメンとカタツムリ、両者の「文化的なつながり」についてです。
カイメンは、人類の生活に非常に密接に関わってきました。

書籍によると、カイメンは英訳では「スポンジ」と訳される通り、体を洗う道具として、また古代から女性の生理用品としても使われてきた歴史があります。
さらに、その歴史は宗教的なシーンにも登場します。カイメンは、キリストの磔刑のシーンにおいて、キリストが飲まされる酸い葡萄酒に浸すために用いられたことが記されています。

メトロポリタンのフラ・アンジェリコの作品です。キリストの左手に、棒の先に海綿を付けた男性が立っています。
一方でカタツムリ(軟体動物)もまた、人間の文化に大きな影響を与えてきました。
本ブログでは、以前イタリアの画家フランチェスコ・デル・コッサが描いた『受胎告知』のシーンにカタツムリが象徴的なモチーフとして登場するなど、キリスト教美術とのつながりがあることを紹介しました。

そして、何と言っても、カタツムリは、フランスやイタリアではエスカルゴとして食文化に深く根ざし、今なお人々の生活を豊かにしています。

このように、動物界で最も原始的なグループの一つである海綿動物も、脳や神経節を持つ軟体動物のカタツムリも、見た目や生態は違えど、時代や場所を超えて、人間の文化、宗教、そして生活に欠かせない存在として深く関わってきたのです。この「ひそかなる人間の文化と歴史の重なり」こそが、私が両者に強く惹かれたポイントです。
進化と特徴に見る生命の多様性:海綿動物と軟体動物(カタツムリ)の特徴比較
次に、両者の具体的な特徴を比較することで、生命の進化の多様性を見てみましょう。
| 特徴 | 海綿動物 (例: 海綿) | 軟体動物 (例: カタツムリ) |
| 分類 | 動物界で最も原始的。多細胞生物の初期。 | 貝類。海綿より遥かに複雑な体制を持つ。 |
| 体の構造 | 脳、神経、内臓、筋肉がない。骨格(海綿骨)を持つ。「すてきなスカスカ」。 | 貝殻(外骨格)、頭部、内臓塊、移動のための足(腹足)、脳や神経節を持つ。軟体という名称に相応しく、柔軟な多様性。 |
| 生態 | 固着生活(動かない)。水の流れから栄養を濾し取る濾過摂食。 | 積極的に移動。粘液による独自の防御と移動。植食性。 |
海綿動物は、神経も持たず、固着して生きていくという極限まで単純化された生命の戦略を貫いています。一方、カタツムリは、複雑な感覚器官を発達させ、殻という独自の防御手段を身につけ、積極的に動く複雑な生命の戦略を選びました。
どちらも全く異なる進化の道を歩みながら、地球上で長く生き残り、生態系の中で成功を収めています。海綿の「スカスカ」な構造も、カタツムリの「殻」も、それぞれが環境に適応し、生命を維持するための独自の「戦略」であり、私たちはその多様性から生命の力強さを学ぶことができるのです。
今回の体験が教えてくれたこと:「ひそかなる」興味を大切に
文学フリマという、一見すると生物学とは遠い場所で、私のカタツムリへの興味により、海綿動物という全く違う生命体へ研究者の方と偶然お話しすることができました😊
また、カイメンもカタツムリも、普段私たちは、人間の文化とは、ほど遠い存在のように考えがちですが、実は人間の文化と深いつながりを持っているという部分を再認識させてくれました。
しかし、文学フリマという場所で新進気鋭の海綿学者とお目にかかるなんて、内心びっくりしました😅
ただ、私が愛好するのカタツムリのノートがなぜか販売されていたのも何か、不思議なご縁だったのかもしれません🤔
こうして文学フリマを堪能した私は、掲示板のスペースに記念にカタツムリを記して、東京ビッグサイトを後にしたのでした🐌



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