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【芸術の秋】カタツムリと芸術 アンリ・マティスの「The Snail (L’escargot)」を考察する

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カタツムリは、さまざまな芸術家の作品のモチーフとして使用されることがあります。今回は、フランスの画家アンリ・マティスの作品「カタツムリ/The Snail(L’escargot)」を取り上げ、この作品の魅力と世界観を考察したいと思います🧑‍🎨

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アンリ・マティスについて

アンリ・マティス(以下、マティス)は、20世紀初頭に活躍したフランスの画家です。フォーヴィスム(野獣派)のリーダー的存在であり、その大胆な色彩使いで「色彩の魔術師」と呼ばれていました。

アンリ・マティスのイラスト
色彩の魔術師:アンリ・マティス

カタツムリ/The Snail (L’escargot)(1953年)

The Snail (L'escargot),アンリ・マティス
カタツムリ/The Snail (L’escargot)(1953年)
作者アンリ・マティス
制作年1952-53年
メディウムガッシュ絵具で着色した紙
サイズ287 cm× 288 cm
コレクションテート・モダン

何処がカタツムリなのか?

私が初めてこの作品を見た時の印象は、「どこがカタツムリなんだ🤔」でした。

この作品を見た方のほとんどが、私と同じような印象を持つと思います。

そして、カタツムリを描いていると言われても、どの部分がカタツムリなのか?と考えてしまうかもしれません😅

しかし、当の作者であるマティスは、この作品を完成させた時には、ほとんど寝たきりの状態だったのにも関わらず、最後の力を振り絞って作品を完成させ、人生の素晴らしさをたたえ、「本質まで還元された形式」とまで語ったのが、このマティスの「カタツムリ」なのです🧑‍🎨

【参考文献】

5歳の子どもにできそうでできないアート: 現代美術(コンテポラリーアート)100の読み解き 

5歳の子どもにできそうでできないアート: 現代美術(コンテポラリーアート)100の読み解き

作品の構成について

この作品はマティスの晩年、1954年11月に亡くなる前の1952年夏から1953年初めにかけて制作されました。この作品は、紙にガッシュで顔料を塗り、白い紙の下地に切り貼りしたもので、大きさは287×288cmで、ロンドンの国立美術館テート・モダンに所蔵されています。

またこの作品は、螺旋状に配置された12色の色彩図形と黄金比を用いて構成されています。

マティスのカタツムリ
12色の色彩図形
黄金比率
黄金比が用いられています。

マティスはまず、キャンバスにカタツムリを描き、その上に色紙を配置しています。
なお、色紙の構成は色相環で正反対に位置する色の「補色」を用いています。

補色図
色彩には補色を用いています。

音楽と色彩との融合

そしてマティスはこの作品に『ラ・コンポジション・クロマティーク/La Composition Chromatique』という別のタイトルをつけています。

クロマティックとは音楽の半音階を含む12音階を表しています。この作品の色彩は12色で構成されており、カタツムリと音楽と色彩のモチーフが見事に一体化した構図となっているのです。

ピアノ
ピアノの鍵盤は、半音階のクロマティックスケールで構成されています。

絵の上に、更に描く

マティスは、生涯、さまざまなジャンルやスタイルの絵画を取り入れて探求を続けていました。

マティスの作品は、一見シンプルな作品が多いですが、実はX線を用いた分析を行うと、何度も何度もデッサンを施したり、色を塗り直したり、一枚のキャンバスの中には、実はさまざまなパターンを試行錯誤した痕跡が残されていると言われています。

マティスの作品は、何度も何度も絵の上にさらに絵を描き、修正が加えられ、無駄な部分を削ぎ落とす「(描くべき構図や色彩は)キャンバスの向こうから来る」というタイミングがあり、そのタイミングが来て初めて筆が止められたようです。

Henri Matisse, La Blouse Roumaine, 1940, Musée National d'Art Moderne, Paris
Henri Matisse, La Blouse Roumaine, 1940, Musée National d’Art Moderne, Paris

猪熊弦一郎のエピソード

わが国を代表する洋画家である猪熊弦一郎には、マティスと交流があり、マティスのアトリエを訪れたときのこと、制作中のキャンバスの前には、おびただしい程の絵の具が付着した脱脂綿が落ちていたと語っています。そして、それに大いに感動した猪熊は、その脱脂綿を記念に持ち帰ろうとしたところ、マティスに驚かれたというエピソードがあります。

猪熊弦一郎
マティスと交流があった猪熊弦一郎

マティスは抽象的か?

マティスの作風は、どこか抽象的な作風と誤解される事があります。対象の本質を捉えるというより、イメージの世界のような印象を持たれる事があります。

特に、今回ご紹介している、マティスの「カタツムリ」は、カラフルな色紙と、音楽と色彩を融合したような作風は、一般的なカタツムリのイメージとはかけ離れているような気がします。

しかし、マティスが描いたように、カタツムリがカラフルな外見とともに、かつ音楽を奏でている様子は、自然なカタツムリの知られざる姿なのです。

例えば、ハワイのオワフ島は、かつてはカラフルなカタツムリが生息する楽園と呼ばれていました。そしてこのカタツムリは唄い、音楽を奏でていたと言い伝えられています。

David Sischo/Hawaii Department of Land and Natural Resources

おわりに

マティスの「カタツムリ」は、一見、カタツムリと音楽と色彩を組み合わせた抽象的な作品に見えるかもしれませんが、実は自然界のカタツムリの本質を見事に捉えた作品なのかもしれません🧐

皆さんは、マティスの「カタツムリ」を見てどのような印象を抱かれたでしょうか?

なお、マティスの作品はしばしば日本の美術館で見ることができます。お近くで展示会が開催されているようでしたら、ぜひ、マティスの迫力ある作品を実際にご覧ください。

きっと、南仏にいるような爽快な気分と不思議な魅力のとりこになってしまうことでしょう😄

マティスの切り絵はとてもエネルギッシュな感じがします🧐

※マティス自由なフォルム展では、今回ご紹介している作品「カタツムリ」は来日していません、

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